フランス総選挙中間報告(下) 揺らぐ新人民戦線、左翼にかつての勢いなく

執筆者:国末憲人 2024年6月26日
エリア: ヨーロッパ
一時は台風の目になる可能性もあったグリュックスマンだが、その発言力は低下した[2024年6月19日、フランス・マルセイユ](C)AFP=時事
マクロンの“勝ち筋”に欠かせない要素は二つあった。右派側では「国民連合(RN)の孤立」、左派側では欧州議会選でも躍進した小政党「公共広場」(PP)を中心にする中道寄り勢力の形成だ。だが左派左翼が連合した「新人民戦線」は、まとまりに欠けると同時にマクロンが期待した穏健勢力の台頭もなく、「公共広場」主催者のラファエル・グリュックスマンは大幅に発言力を失った。マクロン側は左派を呼び戻そうと揺さぶりをかけているものの、新人民戦線からマクロン側になびく兆候はうかがえない。

 

 フランス国民議会(下院)の解散総選挙に踏み切った大統領エマニュエル・マクロンの基本戦略は、右派と右翼、左派と左翼を分離し、左右双方の穏健な勢力との連携を探ることにあった。しかし、右派右翼連携を画策するメディア王の支援を受けて、右派の一部が右翼になびき、右側の情勢が混沌としてきたのは、すでに述べた通りである。同様に左側も、大統領の思惑通りには進まなかった。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授、本誌特別編集委員 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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