空母打撃群をインド太平洋に送るイタリアの新「海洋国家像」

Foresight World Watcher's 4Tips

湾岸およびインド太平洋地域との通商拡大では「兵器輸出」を視野に入れる[日本に初寄港したイタリア海軍の空母「カブール」=2024年8月22日、神奈川県・海上自衛隊横須賀基地](C)時事

 

 8月22日にイタリア海軍の空母「カブール」とフリゲート艦「アルピーノ」が海上自衛隊横須賀基地に入港しました。空母打撃群の日本寄港はインド太平洋地域への関与強化を示すものでありつつも、単なる「旗印を示す(showing the flag)」ための航海ではないと米オンラインメディア「ウォー・オン・ザ・ロックス(WOTR)」掲載の小論が指摘します。執筆者によるとそれは、メローニ政権で新たに自覚された安全保障と通商が結びつく海洋国家像の発露だとされます。

 中国の過剰生産・過剰輸出問題については、様々な議論が続いています。党の号令一下で皆が同じセクター、同じ技術領域に殺到することにより、中国産業自身はどのような構造的ダメージを受けているのか。また、大統領選後のアメリカの通商政策が不透明なこともあって自由貿易体制の行方にも注目が集まりますが、これに対中国の「通商防衛連合」を構築せよとの論考も目を引きました。米「フォーリン・アフェアーズ」誌の2本をご紹介します。

 フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事4本、皆様もよろしければご一緒に。

What Is an Italian Carrier Strike Group Doing in the Indo-Pacific?【Alessio Patalano/War on the Rocks/8月29日付】

「今週、航空母艦カブールとフリゲート艦アルピーノを中心とするイタリアの空母打撃群が東京湾に入港した。空母打撃群は、AV-8BハリアーII戦闘機13機で編成された航空団、およびピッチブラック演習[7月にオーストラリア空軍が主催した多国間共同演習]で約180時間の飛行時間と110回の任務を終えたばかりの最新鋭のF-35B戦闘機を日本に連れてきた。[略]この艦隊は、日本に向かう途上、米海軍のエイブラハム・リンカーン空母打撃群と、この[インド太平洋]地域で初の大規模共同訓練も行った」
「これは[略]単なる欧州の外交的演習の寄港や基本的な演習の一環ではない。イタリア海軍が日本に赴くのは、両国の間に強固な関係を築くという目的のもと、自らの高度な信頼性を軍事関係者に提示するためだ。[略]これ[訓練用帆船まで含む艦隊の派遣]は、他の欧州諸国の海軍による最近の訪日では他に類を見ない海軍の意思表明である」

 軍事・安全保障を専門とする米国のオンラインメディア「ウォー・オン・ザ・ロックス(WOTR)」に8月29日付で公開された小論「イタリア空母打撃群はインド太平洋で何をしているのか?」は、このように始まる。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top