踏み絵としての「裏金議員」公認問題 永田町に広がる「小泉進次郎」をめぐる疑心暗鬼

執筆者:永田象山 2024年9月3日
タグ: 総裁選
石破・河野両候補と差別化できるか[記者団の取材に応じる小泉進次郎元環境相=9月2日午前、東京都内](C)時事
本日(3日)午後、林芳正官房長官は4人目の自民党総裁候補として正式に名乗りを上げた。9月に入って出馬会見ラッシュが続く見通しだが、「裏金議員」公認の是非という大きな踏み絵はどの候補も避けられない。国会議員票獲得を念頭に、石破・河野両氏は“穏当”なスタンスへと軌道修正を行った。この先ひときわ注目されるのが、現時点では最有力と見る向きも多い小泉進次郎元環境相の対応だ。永田町には「裏金議員の非公認にまで踏み込むのでは」との噂も囁かれる。

 9月12日告示、27日投開票の自民党総裁選はいよいよ9月に入って候補者たちの出馬表明が佳境を迎える。すでに小林鷹之前経済安保担当相、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル大臣の3人は出馬表明を済ませており、林芳正官房長官は3日午後に出馬会見を行った。茂木敏充幹事長は4日、そして本命視される小泉進次郎元環境大臣は6日に会見を開く方針だ。

 総裁選の争点として、それぞれが派閥の裏金事件をきっかけに「党改革」や「政治改革」を訴えることが予想される。しかしその対策が実態を伴うものかどうかは慎重な見極めが必要になる。

石破「新体制になれば、可能な限り早く国民の審判を仰がなければならないと思っている。その際、党の公認候補として、公認にふさわしいかどうか、そういう議論は選挙対策委員会で徹底的に行われるべきと思っている」(8月24日)

 地元鳥取県で出馬会見を行った石破は裏金事件に関する党のけじめについて問われた際、このように発言した。裏金を受け取っていた旧安倍派や旧二階派の議員については、衆参の国政選挙において党の公認を見直す可能性に触れた発言と受け止められた。

歯切れの悪い石破、河野

 しかし、翌日、石破のトーンは明らかに弱まっていた。

石破「(裏金議員の扱いは)新体制になってどうするのかを決めることになる。裏金ということだけでなく、今までの姿勢や、政策に対する見識とか、地元における信頼、様々な要素があるので、自分が申し上げることはない」

 公認するかしないかの判断基準に関して「裏金だけでなく今までの姿勢や地元の信頼」など要素を列挙して、それ以上踏み込むことはなかった。

 一方、石破とならんで有力候補と目される「小石河」の1人、河野は8月26日に会見を行った。河野も冒頭に裏金議員への対応について言及した。しかし、それは公認の取り消しという手荒なものでなく、“穏当”なものであった。

河野「不記載になってしまった金額を返還することで、けじめとして前へ進んでいきたいといと思っている」(8月26日)

 裏金の金額と同額を各議員が返還することで一定のけじめとするという案を示した。報道陣からは「選挙での非公認」についての質問もでたが、河野は返金がけじめであることを繰り返し訴えた。

河野「(返金で)けじめがつけば、あとは自由民主党の候補として国民の審判を総選挙で仰ぐということになる」

 また河野は、未だに自民党で残っている唯一の派閥、麻生派に属していることについて聞かれると「派閥が人事に携わらないというガバナンスコードが守られるという点をみんなで確認をすることが大事」だと述べるにとどめ、出馬会見では麻生派からの脱退には触れなかった。

自民党議員 「岸田さんと戦ったときの総裁選と比べて勢いないよね」

自民党関係者「派閥のこともあって河野さん守りに入っているね」

 評判のよくなかった出馬会見を意識してか河野は31日、報道陣に対して自分が総理になった場合には「派閥を離脱する」ことを表明した。 

 石破、河野は小泉進次郎と並び、これまで世論調査で高い支持を得てきた政治家だ。両者は裏金問題に深くメスを入れることで世論の支持を得られるということは感覚的によく心得ているのだろう。

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カテゴリ: 政治
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永田象山(ながたしょうざん) 政治ジャーナリスト
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