トランプ政権に「中国以外のアジア」は見えているか
Foresight World Watcher's 4 Tips

米トランプ政権とヨーロッパの軋轢が波紋を広げ続けています。イーロン・マスク氏が率いる衛星通信網「スターリンク」がウクライナで遮断されるとの報道については、マスク氏が自身のXで「This is false. 」と否定しましたが、こうしたリスクの存在そのものは無視できません。欧州メディアには米国に頼らない安全保障体制を確立せよとの議論が目立ちます。
一方で、米国とアジアの関係についてはどうなのか。トランプ外交の最重要テーマが中国への対抗にある限り、インド太平洋地域との連携強化は必須の前提です。しかし、国防長官就任前のピート・ヘグセス氏が米上院公聴会でASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国数を答えられなかったことが示唆するように、政権の意識からはこの地域との外交関係のデザインが抜け落ちている懸念も拭えません。英「エコノミスト」誌の伝えるオーストラリアの「見捨てられる不安(Fear of Abandonment)」は、トランプ政権の対中国シフトの危うい足元を示していそうです。
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How Europe must respond as Trump and Putin smash the post-war order【Economist/2月20日付】
「欧州にとってこの1週間は、鉄のカーテンが崩壊して以来、最も暗い週となった。ウクライナは切り売りされ、ロシアは復権しつつあり、ドナルド・トランプのもとでは戦争勃発時に欧州を支援してくれるとアメリカに期待することはもうできない。欧州の安全保障に対する影響は深刻だが、各国の指導者や国民にはまだその認識が浸透していない。旧世界は、無法の時代にハードパワーを行使する方法について特訓コースを必要としており、それなしでは新世界秩序の犠牲となる」
エコノミスト誌は「トランプとプーチンが戦後秩序を壊すなか欧州はどう対処すべきか」(2月20日付)の冒頭で、強い危機感を示した。ウクライナと欧州を軽視するだけでなく、ウラジーミル・プーチン大統領体制のロシアとの宥和に動くような気配まで示すトランプ政権について、記事は次のような警告まで投げかける。

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