メディア批判では誤魔化せないトランプ政権「シグナルゲート」の発するサイン

Foresight World Watcher's 8 Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2025年3月30日
エリア: 北米
[2025年3月25日、米連邦議会議事堂で開かれた民主党の記者会見では「シグナル」グループチャットの画面を写したポスターが掲示された](C)Aaron Schwartz/Sipa USA via Reuters Connect

 米政権の高官たちが、イエメンの親イラン武装組織フーシに対する武力攻撃計画についてメッセージアプリの「シグナル(Signal)」でやりとりした内容が“流出”したという「シグナルゲート」。無関係の雑誌編集長を誤ってグループチャットに招待したという唖然とするような顛末ですが、第2次トランプ政権が発足して以来、最大のスキャンダルに発展しています。

 トランプ政権は件の編集長がハッキングした可能性まで示唆して“メディアの魔女狩り”をアピールしたものの、操作をミスしたウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を筆頭に、ヘグセス国防長官やバンス副大統領らの発言(チャット参加者は19人とも)がスクリーンショットを駆使して暴露されては否定するのも難しい。そもそも秘匿情報を一般に利用されるアプリで交換したという問題もあります。

 バンス氏らは、ウォルツ氏の解任を水面下でトランプ氏に働きかけたと伝えられます。チャット内容に加え、発覚後から現在までの主要関係者の反応を詳細に追ったニューヨーク・タイムズとポリティコの記事は、スキャンダルで政権内に生じた不協和音のみならず、幹部たちの通常は表に出ないキャラクターや人間関係までも暗に窺わせる内容です。

 フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事8本、よろしければご一緒に。

‘Almost comical': the Trump team's first national security crisis【Guy Chazan/Financial Times/3月29日付】

「『アトランティック』編集長のジェフリー・ゴールドバーグが、イエメン攻撃を協議するトランプ政権のチャットグループに自分が含まれていると気づいたとき、彼は最初、冗談だと思った。/米国の高官たちが軍事計画を話し合うために携帯電話のメッセージングアプリを使用しているなどとは、想像もできないことだった。ましてや、ジャーナリストを会話に招待するなどということは」
「3月15日の土曜日、ゴールドバーグが[大手スーパーマーケット]セイフウェイの駐車場にいたとき、国防長官のピート・ヘグセスが米国による攻撃についての詳細な計画を送ったことが携帯電話で見てとれた(「作戦開始のGOだ」と書かれていた)。その時ようやく、ゴールドバーグはSignalのメッセージング・グループが本物かもしれないと気づき、国家の安全保障に対する重大な侵害であると認識した」
「『シグナルゲート』として知られるようになったこのスキャンダルは、ドナルド・トランプ大統領にとって、2期目の任期が始まってから2カ月余りで最初の大きな危機となっている」

 このように書いているのは、英「フィナンシャル・タイムズ」紙の米国特派員、ガイ・チェイザンだ。「“ほとんどマンガ”――トランプ・チーム最初の国家安全保障危機」(3月29日付)で、彼は「この事件は、2つの理由から注目を集めている」とする。

カテゴリ: 政治
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