国際人のための日本古代史 (5)

「天皇の政治利用」で身を滅ぼした恵美押勝

執筆者:関裕二 2010年2月号
タグ: 中国 日本

 私利私欲のために天皇を利用すると、ろくなことにはならない。藤原仲麻呂(恵美押勝/七〇六―七六四)がいい例だ。 天平九年(七三七)、藤原不比等の四人の男子が天然痘で全滅すると、反藤原派が台頭し、藤原氏は一気に凋落する。 ところが藤原氏は、雑草のように生き残る。ここで登場したのが、藤原仲麻呂(不比等の孫)だ。仲麻呂は藤原氏の復権を企て、聖武天皇と激突する。 仲麻呂はまず、聖武天皇の息子で、藤原の血を引かぬ安積親王を密殺し(真犯人は分からぬが、仲麻呂がやったことは、ほぼ通説となっている)、聖武天皇を皇位から引きずり下ろすことに成功する。こうしておいて孝謙天皇(聖武天皇と光明子の娘)を皇位につけた。

カテゴリ: カルチャー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top