「遺伝子組み換え作物」の勢いは止まらない

執筆者:鷲尾香一 2010年10月12日
エリア: アジア
花なら口には入りませんが……(サントリーが開発した「青いバラ」)(C)時事
花なら口には入りませんが……(サントリーが開発した「青いバラ」)(C)時事

 2006年のオーストラリアの大干ばつや、今夏のロシアでの干ばつによる2011年末までの穀物輸出全面禁止など、穀物の不作が大きくニュースで取り上げられるケースが増えている。ならば当然、世界は穀物不足に陥っているのかと思えば、そうではない。生産動向により価格は変動しているものの、意外にも穀物全体の生産量は十分に需要量に対応している。  農林水産省によると、世界の穀物需要量は、途上国の人口増、所得水準の向上などに伴い、2010年は1970年に比べ2倍に増加しているが、生産量が消費量を上回ることから、期末在庫率は安全在庫水準を上回る見込みだという。その生産量を支えているカラクリの1つが、遺伝子組み換え作物にある。  遺伝子組み換え作物は、GMO(Genetically Modified Organism)やGM作物とも表記される。1994年に、完熟にもかかわらず日持ちのよいトマトが、世界で初めて米国で組み換え作物として販売された。そして、96年には害虫に抵抗性のあるとうもろこしなどを皮切りに、大豆などの遺伝子組み換え作物の商業販売が始まった。  その後、遺伝子組み換え作物の栽培は飛躍的に拡大する。96年の世界の遺伝子組み換え作物栽培面積は170万ヘクタール(ha)に過ぎなかったが、2009年には1億3400万haにまで拡大している。これは実に、日本の耕地面積の約29倍に当たる。  栽培面積を品目別に見ると、大豆が6920万haで全体の52%を占め、次いでとうもろこしが4170万haで31%、綿実が1610万haで12%、菜種が640万haで5%と、この4品目で全体の99.6%を占める。国別の栽培状況では、米国6400万ha、ブラジル2140万ha、アルゼンチン2130万ha、インド840万ha、カナダ820万haがベスト5となっている。

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執筆者プロフィール
鷲尾香一(わしおこういち) 金融ジャーナリスト。本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。
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