経済の頭で考えたこと
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アラブの春と「イラン」「中国」「イスラエル」
この1年の世界の動きを見渡してみて、2011年という年を特徴づける最大の出来事は何であったのか。
ユーロ圏の動揺、サプライチェーン・マネジメントの遮断に直結した3.11東日本大震災とタイの大洪水、米国でのQEⅡ(金融の量的緩和の第2弾)の不成功とオバマ政権の急失速などは、間違いなくグローバル・レベルで論じられなければならない事柄だ。しかし、それ以前からの認識を根底から断ち切った新事態という視点に立つならば、アラブの春の到来とその巨大なる余波こそがその最右翼と私は判断している。
背景にあったのがSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)という1人ひとりを繋ぎ、かつ結びつけていくグローバルなプラットフォームの急浸透であった。「1人ひとり」は、簡単な端末機器によって、仮想空間を通じた接近が可能になったのだ。ジャンヌ・ダルクやローザ・ルクセンブルクのようなビッグ・ネームは必要なかった。少し前の組織論にあえて似せるならば、「憂慮する有識者達(コンサーンド・スカラーズ)」の呼びかけとでもいえるのだろうか。

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