饗宴外交の舞台裏 (183)

「ペルー大使公邸人質事件」知られざる大使夫人の奮闘

執筆者:西川恵 2013年8月19日
タグ: スペイン 日本
エリア: 中南米
 当時を振り返る青木夫人(筆者撮影)
当時を振り返る青木夫人(筆者撮影)

 外交官が外務省を定年退職する時、夫婦で「任地で大きな事件、事故がなくてよかった」と安堵の言葉が口をつくという。これは何人もの外交官OBから聞いた話だから本当だろう。

 任地で邦人がクーデター、テロ、大災害などに巻き込まれると、邦人保護の最前線に立つ日本大使館は大変だ。陣頭指揮をとる大使の危機管理能力が試され、メディアの批判にもさらされる。しかしその大使が事件の渦中に巻き込まれたらどうなるか。

 駐ペルー大使だった青木盛久氏は1996年12月、公邸で天皇誕生日レセプションを開いているさなか、過激派に襲撃され、71人の人質と共に126日間、公邸内で囚われの身となった。いわゆる日本大使公邸人質事件である。この時、公邸の外から物心両面で支えたのが夫人の直子さんだった。その直子さんが最近、取材に応じ、当時、ほとんど報じられなかった「大使夫人の危機管理」について語ってくれた。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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