饗宴外交の舞台裏 (27)

国外でも激化する中台外交戦

執筆者:西川恵 2000年3月号
タグ: 中国 台湾
エリア: アジア 中南米

 アルゼンチンのフォークランド沖で操業中の台湾の遠洋イカ釣り漁船「厚春一〇一号」がアルゼンチン海軍艦船に拿捕され、海軍基地に曳航されたのは二月四日夜のことである。国連海洋法条約に定められた排他的経済水域である二百カイリ内に入って違法操業を行ったという理由だった。

 台湾はアルゼンチンと外交関係がない。第一報を受け取った台湾外交部(外務省)は、首都ブエノスアイレスにある台湾代表部に事実確認と当局との早急の接触を指示した。

 外交関係のない国でこの種の事件が起きると、台湾にとっては厄介なことになる。外交ルートがないため、代表部が直接相手国の外務省に接触する訳にはいかないからだ。日本でいえば交流協会のような外務省の外郭団体を通じて接触することになるが、時間もかかるし情報も精度を欠く。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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