復活した「中朝血盟関係」の裏側

執筆者:平井久志 2010年11月2日
エリア: アジア
10月10日、閲兵式で談笑する金総書記と周政治局常務委員(C)AFP=時事
10月10日、閲兵式で談笑する金総書記と周政治局常務委員(C)AFP=時事

 北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の訪中(8月26日~30日)、朝鮮労働党代表者会(9月28日)、同党創建65周年(10月10日)、朝鮮戦争への中国人民志願軍参戦60周年(10月25日)という北朝鮮をとりまく一連の政治日程を経ながら浮かび上がっているのは、中国と北朝鮮の「血盟関係」の復活であり、中国の朝鮮半島への影響力拡大だ。  金総書記の訪中後の中朝間の軍事、政治、経済、社会、文化各分野にわたる代表団の活発な相互訪問は、あたかも鮮血を注入することで死にかけていた「中朝血盟関係」を生き返らせているような感がある。  中国の指導部が江沢民主席から胡錦濤主席へ交代し、ほとんどの専門家は、中朝関係は旧来の伝統的な「血盟関係」から「実利関係」にさらに移行すると予測した。しかし、現在、朝鮮半島で生じている中朝の関係強化を見る限り、専門家の「予言」は大きく外れた。もちろん、現在の表面的な状況の底流を流れているのはやはり「実利関係」であるにしろ、その底流の上で、あえて中朝の指導部は「血盟関係」という古色蒼然とした伝統的関係の復権を謳う路線を選択した。そのことは意味があり、それを多くの専門家が予測できなかったのも事実であろう。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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