ブックハンティング・クラシックス (61)

英外交官が30年の「格闘」から学んだ中国の実像と未来

執筆者:樋泉克夫 2012年9月7日
エリア: アジア
『中国との格闘 あるイギリス外交官の回想』
パーシー・クラドック著/小須田秀幸訳
筑摩書房 1997年刊(原書は1994年刊)
『中国との格闘 あるイギリス外交官の回想』 パーシー・クラドック著/小須田秀幸訳 筑摩書房 1997年刊(原書は1994年刊)

 キッシンジャーは「無視するには大きすぎ、抱き締めるにはあまりに抑圧的であり、影響を及ぼすのは難しく、この上なくプライドが高い、という特別なカテゴリーに属する」とのオルブライト元米国務長官の中国評をそのまま引用し、中国を語っている(『キッシンジャー回想録 中国』、岩波書店、2012年)。国際政治の修羅場を数多く潜り抜けてきた彼にとっても、中国は外交ゲームの定石が通じない、あまりにも手強い相手だったということだろう。おそらく1972年にニクソン・毛沢東会談を成功させて以来の、彼なりの長い中国体験に基づく率直な感想に違いない。  この本は、タフで老獪このうえないキッシンジャーですら戸惑わせてしまうような中国を相手に、文字通り「格闘」し続けた「あるイギリス外交官の回想」である。だが、たんなる「外交官の回想」ではない。飽くまでも「中国との格闘」に30年(1962-1992)をかけた「イギリス外交官の回想」なのだ。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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