第1章 妾腹の美少女
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わたしは子供を産んでも処女だったわ――。
明眸皓歯(めいぼうこうし)の表情をきかせ、後年、藤原あきは自分の半生をこう回想している。
個人の自由や権利など主張することが出来ない封建的な世の中で、ましてや若い娘の意志や夢などに誰が耳をかしただろう。
明治維新から世の中が大きく変わりつつあっても、あきが生まれた明治30(1897)年という時代はまだ、娘は家長や親せきが決めた家に嫁いでいかねばならなかった。
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