
「国民服」は1980年代まで成人男性の標準スタイルだった(C)AFP=時事
里見弴『隣邦の今昔』(『世界紀行文学全集』修道社 昭和46年)
このシリーズで取り上げてきた米川正夫、柳田謙十郎、安倍能成、桑原武夫、宇野浩二らの中国に対する姿勢は、おしなべて“拝跪”と表現するしかない。混乱と頽廃の旧中国は消え去り、あたかも道義国家の新中国として生まれ変わったことを伝える。中国政府の掌の上で、まるで己を失くしたかのようだ。彼らもまた中国を前にした時の日本人の悪癖――ある種の思い込み、あるいは先入観や既成観念にとらわれるあまり目の前の現実から目を逸らしてしまう――から逃れられなかったということだろう。どうすれば、この悪癖を克服できるのか。

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