灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(9)

執筆者:佐野美和 2018年9月17日
エリア: アジア
まだ髷を結っていた頃の藤原あき。正確な撮影年は不詳。この後、あきは波瀾万丈の人生を送ることになる(自伝『雨だれのうた』(酣燈社)より)

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 政の中心が京都から東京へと変わり、文明が開かれ、工業をはじめとした経済の大発展をとげた「明治」の主役は、男だった。そして「大正」へと元号が代わり、維新以後走り続けてきた男たちが、一瞬立ち止まってみた隙に、「次の時代の主役は私たちよ」といわんばかりの、少しばかりお洒落をした女性たちが街へ繰り出した。

 中上川あきは、矢がすりのお召ちりめんの着物に、赤地の六寸巾の帯で街へ繰り出す。お抱え車夫が引く人力車で、永田町の家から新橋のたもとまで乗りつけて、銀座4丁目の先までぶらつき、日本で初めてアイスクリームを売ったという「函館屋」でアイスクリームを食べる。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
佐野美和(さのみわ) 政治キャスター。東京都八王子市出身。株式会社チェリーブロッサムインターナショナル代表取締役。大学在学中、フジテレビの深夜番組として知られる『オールナイトフジ』のレギュラーメンバー「オールナイターズ」の一員として活躍した。1992年度ミス日本に選ばれる。TBSラジオのパーソナリティ、TBSラジオショッピングの放送作家を経て、1995年から2001年まで八王子市議会議員として活動。以後はタレントとしてテレビ出演のほか、講演会も精力的に行う。政治キャスターとしてこれまで600人以上の国会議員にインタビューしている。主な書籍に『アタシ出るんです!』(KSS出版)、『あきれたふざけた地方議員にダマされない!』(牧野出版)などがある。
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