
まだ髷を結っていた頃の藤原あき。正確な撮影年は不詳。この後、あきは波瀾万丈の人生を送ることになる(自伝『雨だれのうた』(酣燈社)より)
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「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ」
竹久夢二作詞の流行歌の一節を、あきはひとり口ずさんでみる。
自分は、いったい誰を待っているのであろう。
二十代の健康な肉体に、全身にわたるハリのある肌、毎日鏡の前に座り施す化粧はぴたりと肌に吸いつき、赤い紅で仕上げれば匂い立つように美しいと、自分では思う。

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