灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(22)

執筆者:佐野美和 2018年12月16日
エリア: ヨーロッパ アジア
若き日の藤原義江。撮影年は不詳だが、撮影者は、第2次世界大戦時、米日系人収容所で隠し持っていたレンズでカメラを作り、密かに収容所で暮らす日系人を撮影していたことで知られる写真家の宮武東洋(下関市の「藤原義江記念館」提供、以下同)

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 梅田から乗った汽車が淀橋の鉄橋にかかると、すぐに義江はハーモニカの箱を手にとって開けてみた。

「かなしくなったらこれをふきなさい」とおかみさんの下手な字が書いてある。義江は以前から欲しかったハーモニカが手に入った事で、天にも昇る気持だった。しかも新しい着物を着て、大好きな汽車に乗っている。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
佐野美和(さのみわ) 政治キャスター。東京都八王子市出身。株式会社チェリーブロッサムインターナショナル代表取締役。大学在学中、フジテレビの深夜番組として知られる『オールナイトフジ』のレギュラーメンバー「オールナイターズ」の一員として活躍した。1992年度ミス日本に選ばれる。TBSラジオのパーソナリティ、TBSラジオショッピングの放送作家を経て、1995年から2001年まで八王子市議会議員として活動。以後はタレントとしてテレビ出演のほか、講演会も精力的に行う。政治キャスターとしてこれまで600人以上の国会議員にインタビューしている。主な書籍に『アタシ出るんです!』(KSS出版)、『あきれたふざけた地方議員にダマされない!』(牧野出版)などがある。
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