岩瀬昇のエネルギー通信 (135)

米からサウジへの「核技術供与」でますます遠ざかる「中東和平」

この親密ぶりもいつまで続くか分からない(C)AFP=時事

 

 先日、機会があって『イスラエルの政治と安全保障』と題する講演会を聴講した。専門家から、イスラエルの建国から今日までの「政治と安全保障」に関する推移と、現在の課題等について幅広く、かつ見事に整理された切り口からの話を聞くことができた。

 イスラエルの現状をきちんと確認しておくことは、今後の地域の動静を分析・予測する際に大きな助けとなるため、この講演会は筆者にとって大いに意義があるものだった。

 本欄でも何回か紹介したように、イスラエルの沖合を含む東地中海の「レバント海盆」は膨大な天然ガスを胚胎していると見られている。各国を巻き込んだ総合的な開発が進めば、周辺地域のみならず、欧州のエネルギー供給にとっても大きな助けとなる(世界のエネルギー絵図を変えるか「レバント」ガス資源 2018年1月17日など参照)。「ノルドストリーム2」建設問題でクローズアップされているように、欧州にとってロシアからのガス供給は欠かせないものだが、過度の依存は安全保障そのものに脆弱性を与える側面があるからだ。一部に自国産LNG(液化天然ガス)の市場拡大を目指しているだけだ、という指摘もあるが、米国は安全保障の観点から「ノルドストリーム2」プロジェクトに当初より反対している(ロシア・ガスパイプライン巡る「ドイツ」「ウクライナ」それぞれの「お家の事情」 2018年7月18日など参照)。

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執筆者プロフィール
岩瀬昇(いわせのぼる) 1948年、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?  エネルギー情報学入門』(文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (同)、『原油暴落の謎を解く』(同)、最新刊に『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(エネルギーフォーラム)がある。
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