ウクライナ侵攻で示された「イーロン・マスクの未来」のレジリエンス

執筆者:土方細秩子 2022年4月13日
スターリンクはウクライナの情報戦を支えている(スターリンクのキット=スペースXのHPより)
マスク氏が矢継ぎ早に提供した「スターリンク」「スーパーチャージャー」「パワーウォール」などのインフラは、ウクライナがロシアの軍事力に対抗する上で重要な役割を果たしている。それはマスク氏の描く未来が、どのような危機対応力を備えているかを示すだろう。通信、エネルギーとEVを結び付けながらビジネスモデルを構築してきた「テスラの思想」の持つ力を、いま私たちは目撃中だ。

 テスラのセールスが好調だ。今年1−3月期のグローバルの販売台数は31万台を超えた。また米国内では12万9743台を売り上げ昨年比で87%増。3月だけで見ると4万7953台を売り上げ昨年比で108%増となり、3月の米国の新車販売の3.8%を占めた。米国の全体の販売台数が1−3月期で392万8417台と昨年比で15.7%減となっている中、その躍進ぶりが目立つ。

 好調の理由は、世界的な半導体不足などにより他のメーカーが生産の遅延を余儀なくされている中、テスラは独自の半導体開発などの工夫により生産能力を維持してきたこと、「ギガベルリン」「ギガテキサス」の両工場が正式に稼働を始めて生産力そのものに余裕が出たことなどが挙げられる。しかし、特に3月の販売が伸びたのは、ロシアによるウクライナ侵攻を受け同社CEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏の発言や行動が支持されたことも無関係ではない。

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執筆者プロフィール
土方細秩子(ひじかたさちこ) ジャーナリスト。京都市出身、同志社大学英文科卒。ロータリー財団奨学生としてボストン大学大学院コミュニケーション学科修了。TV番組制作を経て、フリーランスライターとして自動車産業を中心に幅広いジャンルの取材・執筆活動を続けている。フランス滞在後、1993年よりロサンゼルス在住。
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