
米国の黄金時代1950年代の映画「理由なき反抗」。ジェームス・ディーンらが演じる不良少年が崖に向かってクルマを走らせ、最初にブレーキを踏んだ相手を「チキン(臆病者)」と罵る。お馴染みの「チキンゲーム」が、よせばいいのに米議会で繰り広げられている。
ゲームの主戦場は崖ではなく、米政府が法律上認められている借金の天井。「債務上限」の引き上げが認められるかどうかだ。このままでいけば、6月1日ごろにも米政府の借金の額は債務上限に達してしまい、借りたお金を返せなくなるデフォルト(債務不履行)に陥る。
米国庫残高は1年前の3分の1
この手の話にありがちなホラーストーリーと思われる向きも多いだろうから、米国の財政の財布の中身を可視化しておこう。
政府の財布を国庫というが、財布に入っているおカネの残高が国庫残高である。国庫残高は税金や社会保険料が入るたびに膨らむが、政府が予算を使うごとに減っていく。そして国庫がマイナスに陥るというのは、財布の中身がすっからかんになる状態。つまり借りたカネを返そうにも返せないデフォルトである。
ならば足元の米国の国庫残高はといえば、23年5月8日時点で2151億ドル(約29兆円)。1年前の22年5月8日時点の国庫残高は6020億ドルだったので、その3分の1にとどまる。株式市場がコロナバブルに沸いた21年分のキャピタルゲイン(値上がり益)への税収が22年にはドンと入ってきた。それに対し、22年は米連邦準備理事会(FRB)による利上げで米国株はもたついたので、23年にはキャピタルゲインの税収が細った。
これが22年と23年の4月後半の国庫残高の明暗を分けている。その一方で、キャピタルゲイン税収が細っても、予算に計上した歳出は容赦なく出ていく。5月から6月前半にかけては、国庫の入りよりも出の多い時期に当たる。仮に今年5月9日以降、国庫残高が昨年と同じようなペースで減っていくとどうなるか。米財務省の国庫統計をもとに、みずほリサーチ&テクノロジーズに試算してもらった。……

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