選挙法改正後初の地方選挙は「賛成」票が99%以上(2023年11月26日~12月2日)

11月26日付1面トップは、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が国家航空宇宙技術総局の平壌総合管制所を訪問したことについての記事であった。21日深夜の軍事偵察衛星打ち上げ以来、同管制所への訪問は既に3回目となる。金正恩は、2018年から19年にかけて陽徳(ヤンドク)温泉リゾートの建設現場に足しげく通ったが、今回の管制所訪問頻度はそれを格段に上回っており、最高指導者の偵察衛星保有に対するこだわりが再確認されることとなった。28日付と30日付の1面トップも、平壌総合管制所から金正恩が報告を受けたことを報じている。
なお、『労働新聞』など国内向けメディアは、5月の初打ち上げに失敗した事実を2週間以上経ってから報じ、8月の再打ち上げに失敗した事実に至っては全く報じていないため、北朝鮮の人々には半年前の失敗を克服して「成功」に繋がったものと受け止められている。
新たな投票方法もガス抜きにならず
26日付1面中段には、社説「地方人民会議代議員選挙に高い政治的熱意を抱いて参加してわれわれの革命主権を盤石のように固めよう」が掲載された。同日は、選挙法が改正されてから初の投票日であった。翌27日付1面は、金正恩が道、市、郡の人民会議の代議員選挙に参加したと報じた。選挙法の改正により今回から投票箱が「賛成」「反対」の二つに分かれたが、金正恩が緑色の「賛成」箱に投票している写真が大きく掲載されている。1960年代までの白黒2色の投票箱よりもカラフルである。
同日付第3面上段は、有権者の99.63%が投票に参加したと速報した。従来通り、投票しなかったのは「外国に行っているか、遠洋に出て働いている有権者」に限られ、「年老いたか、病気などで投票場に出向くことができない有権者は移動投票箱に投票した」という。28日付1面中段には「中央選挙指導委員会報道」が掲載され、外国に行っていたり遠洋に出ていたりして投票できなかった有権者は0.37%、棄権した有権者は0.000078%であると発表された。後者の実数は十数人と推算できるが、このような数値が発表されるのは異例である。
また、道(直轄市)人民会議代議員候補者に対して賛成票を投じたのは99.91%、反対票を投じたのは0.09%であり、市(区域)や郡の人民会議代議員候補者に対しては賛成票99.87%、反対票0.13%と発表された。反対票がきわめて少数に留まっており、新たな選挙法による投票行動が人々のガス抜きになり得ていないことを示すものとなった。候補者決定に至るまでのスクリーニング過程については詳細が明らかにされていない。建国直前に実施された第1期最高人民会議選挙などでも少数の反対票が見られたが、第2期選挙から賛成率100%を豪語するようになったことから、今後の選挙では、有権者が反対票を投じることのリスクを再確認し、結局は賛成率100%に後戻りする可能性も考えられる。
政治局会議に金正恩出席、司会は趙甬元
12月1日付は、金正恩による朝鮮人民軍空軍司令部と第1空軍師団飛行連隊への訪問を1面から4面中段にかけて大々的に報じた。11月29日の空軍創設記念日「航空節」に際しての訪問であり、金正恩政権による空軍重視の姿勢は一貫していると言える。

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