
【前回まで】タウンミーティングと北朝鮮ミサイル迎撃の後、財務省の土岐は、上野で江島元総理に防衛費増額の財源を相談した。問題は国民の切迫感……。一方、周防は新潟へ。
Episode6 一世一代
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「本日の快挙を下支えしたのは、我々JAXAが開発したレーダーシステムです」
新潟市内のホテルのコンベンションルームで始まった日本海連合の例会で、JAXAの宇宙科学研究所の北森文雄[きたもりふみお]が、パワーポイントを操作しながら説明すると、約200人の出席者から大きな歓声が上がった。
会場にいた周防は、その盛り上がりに、東京とは明らかに異なる熱を感じた。
北森が続ける。
「昨年、北朝鮮から飛来したミサイルの迎撃に失敗した後、我々と防衛装備庁はレーダーシステムの共同開発を促進してきました。実験的に新潟県柏崎市の沿岸部分に配備をしたのが、2週間前。それが、実戦で結果を残したわけです。
本日は、皆さんにこの新しいレーダーシステムの性能をご説明し、一刻も早く日本全国の沿岸に配備すべきだと訴えるつもりで参上しました。しかし、もはや説明は不要ですね」
それを幸運と呼ぶべきかどうかは分からないが、会場の反応を見るまでもなく、新型レーダーシステム配備の重要性を、参加者は切実に実感しただろう。
「このレーダー1基の守備範囲は、半径約50キロです。範囲の広さより、精度を重視したためです。日本の海岸線の長さは、約3万5000キロなので、全土をカバーするためには、単純計算では約350基のレーダーが必要になります。
今回は実験機なので、約100億円の研究開発費を要しましたが、量産が可能になると、1基当たり10億円前後になると試算しています。
つまり、日本の海岸線を守るレーダー網を確保するためには、約3500億円の予算が必要だということです。
また、迎撃ミサイルの数も圧倒的に不足しています」
不満の声が、会場の至る所から上がった。

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