インド総選挙「民主主義の勝利」その現実

Foresight World Watcher's 5Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2024年6月9日
タグ: インド
エリア: アジア
人口2億の重点州、ウッタルプラデシュ州では議席を大きく減らした[勝利演説を行うBJP党本部に到着したモディ首相=2024年6月4日、インド・ニューデリー](C)EPA=時事

 4日に一斉開票が行われたインド総選挙の結果をどう捉えるべきか。有権者数9億7000万人のこの巨大選挙を「民主主義の試金石」と位置付けた議論が目につきます。一時は圧勝観測もあったBJP(インド人民党)が予想外の苦戦を経験したのは「民主主義の勝利」――それはその通りだとしても、我々西側の視点で政治体制競争の文脈に回収する前に、インドで現実に起きていることをもっと仔細に見る必要がありそうです。

 たとえば、経済成長が続きながらなぜ若者の失業率が高止まりするのか。低所得層の反発を招いたという格差拡大はどこで発生しているか。BJPモディ政権の一大政治イベントとして、巨大なヒンドゥー寺院の完成式が年初に行われたウッタルプラデシュ州で何が起きたか。一歩踏み込んだ論考をピックアップしました。

 フォーサイト編集部が週末に熟読したい海外メディア記事5本、皆様もよろしければご一緒に。

The people and places that turned away from the BJP【Economist/6月6日付】

 台湾総統選、インドネシア大統領選、ロシア大統領選、韓国総選挙、メキシコ大統領選、欧州議会選、英国総選挙、そして11月には米大統領戦――。年が明ける前から選挙イヤーと騒がれてきた2024年も半ばにさしかかり、また大きな選挙で結果が出た。インド総選挙だ。

 人口が世界最多、経済規模が世界4位へと上昇している「世界最大の民主主義国家」の連邦下院選は、4月に始まり地域別に7回に分けて行われた投票が6月4日で終了。全国543の小選挙区で計6億5000万票が投じられた結果はすぐに発表され、驚きをもって迎えられた。ナレンドラ・モディ政権は続投が確実視されるものの、大勝との予想がもっぱらだった与党連合は大きく票を減らしたからだ。

「『Ab ki baar, 400 paar』。今度は400議席以上を。これは、インドの総選挙に向けて、BJPと同盟政党が掲げた選挙スローガンだ。しかし、終わってみれば獲得議席は293にとどまり、目標を大きく下回った。BJP自身は63議席を失い、303議席から240議席へと減少。過半数を獲得するのに必要な272議席を割り込んだ。何が悪かったのだろう?」

 英「エコノミスト」誌は、投票結果を分析した記事、「BJPから離れた人々と地域」(6月6日付)の冒頭で疑問を投げかけ、次のようなデータを示す。

▼BJPの全国得票率は前回(2019年総選挙)の37.3%から36.5%へと微減したのみ

▼だが、議席獲得率は56%から44%へ下落

▼躍進を期していた南部での得票率は18%から24%へ上昇したが、単純小選挙区制のため、大きな議席増には結びつかず

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カテゴリ: 政治
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