「決選投票は〈進次郎と石破〉、あるいは〈高市と石破〉の組み合わせになるだろう。進次郎が失速しているのが気になるな」
今週、筆者の元に自民党の元幹部から連絡があり、冒頭のような感想を漏らした。この人物は小泉進次郎元環境大臣を推しているのだが、9月6日の出馬会見直後に見せた勢いがかなり翳りを見せていると焦り気味の様子だった。
9月16日の読売新聞の朝刊に掲載された自民党総裁選の調査結果は衝撃的なものだった。同紙は「党員・党友への電話調査と、国会議員の支持動向調査」を行い、その結果、高市早苗経済安保担当大臣と石破茂元幹事長、小泉の3人の候補が競っていて、このうちの2人が決選投票で争う公算が高いと見通しを示した。
確かに高市、石破、小泉の3人は他の6人よりも頭一つリードしているというのは衆目の一致するところだが、読売の記事のポイントは高市の名前を頭に持ってきているところだ。読売によれば議員票では小泉が高市、石破をリードしているが肝心の党員・党友票では両者の後塵を拝する結果となった。
「いまの状況を端的に分析すれば、小泉が伸び悩んでいるところを高市がぐっと支持を広げている感じだ」(自民党関係者)
未熟さを露呈する小泉
当初は知名度でも各社の世論調査でも優勢だった小泉がなぜ足踏みしているのか。やはり当初から懸念されていた政治家としての未熟さが、至る所で露わになり始めたことが大きな要因と見られている。
記者「中国の訪問の経験はあるか?」
小泉「台湾(訪問)は多くありますね。自民党青年局長の時に……中国には当時、私の父が靖国参拝で大変なこともありました。なかなか(中国に)行くリスクが高いと、これは何を言わんとしているかジャーナリストの皆さんですからわかると思うが、こういったリスクを取ることは余り賢明ではないだろうと。台湾に行ったことはありますが中国はありません」
このやりとりは14日に日本記者クラブで行われた候補者9人による討論会の一コマだ。日中問題に関連して中国訪問経験があるかという問いに対して、小泉はこのように答えた。
いわずもがなであるが、日中問題は日本外交にとって非常に優先度の高いテーマだ。
どういったスタンスであれ中国としっかり対話できることが次の総理総裁には求められているのだが、対中国の折衝経験がゼロであることを告白した上で「台湾に行ったことはある」と無邪気に答えた小泉の答弁について自民党内からは、「あの発言を聞いて大丈夫かと思ったね」(閣僚経験者)などの声が上がっている。
また、総裁選告示直前にはこんなハプニングも発生した。野田聖子元総務大臣は総裁選への出馬に必要な推薦人20人の国会議員を獲得することが出来ず、告示の前日に出馬断念を発表し、小泉支持を明言した。
野田聖子「小泉進次郎さんご本人から何度も直接お電話をいただきました。しかるべき立場で小泉陣営を補強してもらえないかと」(11日会見)
野田自身も小泉から「しかるべき立場で」迎えるという確約を取り付けたことを認めているが、そのポストというのが小泉陣営の選挙対策本部長だったのだ。
「その話を聞いた時には複雑な気持ちだった。野田さんは子育て支援策等で自分のプレゼンスをアピールしたいのだろう」(小泉選対議員)
出馬表明まで小泉を陰で支えてきたメンバーたちからは、いわば「ぽっと出」の野田を選対のトップに置くということへの不満が増幅され、最終的に小泉は選対本部長を置かないという異例の判断に追い込まれた。
「小泉さんとしては議員票を確かにしたいという気持ちがあったと思うが……」(小泉選対議員)
陣営内からは、この“幻の野田聖子選対本部長”の一件に見られるような小泉の政治手法への不安の声も上がっている。
“高市さんセコい”と反発する議員たち
小泉が未熟さを随所で見せるのを尻目に、高市は着実に党員・党友票の上積みを進めているように見られた。しかしここに来て、高市にも致命傷にもなりかねない深刻な問題が浮上する。
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