饗宴外交の舞台裏 (64)

アラブ世界に人生を捧げた1人の外交官

執筆者:西川恵 2003年5月号
エリア: 中東 アジア

 米軍がイラクの首都バグダッドに入ったとのニュースが流れた四月五日、元外務省アラビストで、駐アルジェリア大使を務めた故渡辺伸氏の一周忌の集いが東京・国際文化会館で開かれた。 集いには故人と親交のあったアルジェリアのベンジャマ駐日大使、オマーンのアル・ザラーフィ駐日大使をはじめ、外務省の現役・OBアラビスト多数が参加。心底アラブを愛した故人を偲んだ。 渡辺氏は、一九六四年に外務省入省。アラビア語を修め、エジプト、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など外交官人生の多くをアラブ諸国で過ごした。氏をよく知る人によると、九六年、最後の任地としてアフリカのある国が提示されたとき、「どこでもいいからアラブの国にしてほしい」と固辞。このためテロが頻発する、任地としては厳しいアルジェリアに回された。しかし氏にはやりがいのあるポストだったようだ。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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