フランスのエビアンで六月一日から三日まで主要国首脳会議(サミット)が開かれた。一日の昼食から三日の昼食まで計五回、首脳らの食事を受け持ったのは会場となったホテル・ロワイヤル・パルク・エビアンの料理長ミシェル・リンツ氏(四八)だった。 ただ、サミットを主催する度に食事では粋な趣向を凝らすフランスだけに今回も思わぬ仕掛けを用意していた。中日の二日、昼と夜の食事はリンツ氏の指導で地元のホテル学校「サヴォワ&レマン」の生徒が作り、給仕も同校の生徒が担当したのである。日本でいえば高校生の年代である。 ホテル学校は料理と給仕のプロフェッショナルを育てる専門学校で、同校はフランスでは最も古い一九一二年に設立された。パトリック・ブルッスー校長にエリゼ宮から「サミット首脳の食事と給仕に生徒が参加していただけるか」と話があったのは今年初め。「世界のVIP相手に腕を振えるまたとない勉強の機会」と、校長は二つ返事でOKした。

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