経済の頭で考えたこと (12)

オバマ政権が中東で模索する「巨大な協定」

 二〇〇九年の年頭は、イスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区に対する分断作戦の苛烈化で始まった。これを受けて原油価格は上昇に転じ、〇八年十二月の四十ドル割れという水準はしばらくは想定しにくくなった。石油のもつ地政学的不安定性を再び認識せざるをえなくなったのだ。世界的なマネーの凍結のなかで、原油価格だけが上昇に転ずるという状況は、経済運営にとって好ましいことではない。一月二十日の米新大統領就任式典を前に、オバマ政権を構成する政策スタッフには動揺の色が表われたことであろう。 二月の総選挙を前にイスラエルの与党と政府はイスラム原理主義勢力であるハマスに対して、ガザからのロケット砲攻撃をもはや許容しないという姿勢を明らかにした。砲撃を封じ込める理論づけは「抑止」だ。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
田中直毅(たなかなおき) 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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