3800万人の国に960万人が流入――ポーランドがウクライナ避難民受け入れに成功した理由 

執筆者:三好範英 2023年3月1日
タグ: ウクライナ
エリア: ヨーロッパ
避難民支援のテントが並ぶウクライナ国境の町、ポーランド・メディカ(2022年4月1日、筆者撮影)
ポーランド人はロシアのウクライナ侵略がどんなものであるかを即座に理解したという。第2次世界大戦中のウクライナ民族主義者によるポーランド住民殺害など、深刻な歴史認識問題を抱えるポーランドとウクライナだが、ロシアに対する脅威認識はその対立を吹き飛ばした。自国人口の4分の1に相当する避難民の流入にポーランドはどう対処したか。2015年のヨーロッパ難民危機時との違いとは。

 

 2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵略開始から1年が経過した。この間、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、累計でウクライナ人1200万人余り(重複を含む)が欧州諸国で避難民などとして登録され、隣国ポーランドには国別で最大の960万人(同)が入国した。戦争が長期化する中、西側諸国では支援疲れも報じられるが、ポーランドの避難民支援姿勢は揺らいでいないようだ。

 侵略開始直後、ポーランド避難民をめぐる状況は危機的となった。10日間で、ウクライナから105万人が国外に逃れ、そのうち最多の55万人がポーランドに入国した。ポーランドは官民挙げて対応に当たった。

 筆者は昨年3月終わりから4月にかけて、ポーランドのウクライナ国境や首都ワルシャワを訪れ、避難民を取材する機会があった。この時点で、250万人以上がポーランドに流入していた。

 だが、私が取材した範囲では避難民受け入れに大きな混乱は見られなかった。

 国境の町メディカではポーランド内外の支援団体のテントが列をなした。クラクフの民間支援団体が運営する住居斡旋施設でも、多くのポーランド人学生がボランティアとして働いていた。至る所にウクライナ国旗が掲げられ……

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
三好範英(みよしのりひで) 1959年東京都生まれ。ジャーナリスト。東京大学教養学部相関社会科学分科卒業後、1982年読売新聞社入社。バンコク、プノンペン特派員、ベルリン特派員、編集委員を歴任。著書に『本音化するヨーロッパ 裏切られた統合の理想』(幻冬舎新書)、『メルケルと右傾化するドイツ』(光文社新書)、『ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱』(光文社新書、第25回山本七平賞特別賞を受賞)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top