元副党首に会いに行く
筆者が今回投宿したのは、パリ南部14区、モンパルナス駅南方の場末のホテルだった。周囲には、公式掲示板以外の街角にも、新人民戦線の選挙ポスターがべたべた貼られている。パリ市内では、比較的裕福で年齢層が高い西半分で中道の与党連合が、労働者層や移民が多い東半分で左派左翼の新人民戦線が、優位に立つ。14区はその境目にあたり、票の奪い合いが激しいことをうかがわせた。
一方で、国民連合のポスターはほとんど見当たらない。フランス全土を席巻する国民連合にとって、パリ首都圏周辺はほぼ唯一浸透できていない地域であり、最初から捨ててかかってポスターも貼らずに済ませたのかもしれない。
6月30日の第1回投票は、その傾向を予想以上に鮮烈な形で示した。
国民連合は、これに合流した右派「レピュブリカン」党首エリック・シオティ(58)の系列候補も含めて、全国でほぼ満遍なく得票を積み重ね、297選挙区で1位に立った。得票率は33.35%に達した。一方で新人民戦線も健闘し、28.28%を獲得した。与党連合も当初思われたほどぼろぼろではなく、21.79%だった。
大統領選の場合には上位2人が決選に進出するが、総選挙の場合は12.5%を得票した候補が決選に進む。つまり、選挙区によっては三つ巴、あるいは四つ巴の決選もあり得えた。決選の結果は従って、国民連合の候補に対し、新人民戦線と与党連合との間での候補者調整がどこまで進むかに、左右されそうだった。
国民連合は、依然として組閣への最短距離に位置している。彼らは内閣を握って何をするのだろう。真意を確かめたいと思ったが、バルデラやルペンの周囲は近年警備が厳しくなり、外国人研究者にとって集会や会見へのアクセスは難しい。第1回投票の結果を見終えた筆者は、彼らに代って国民連合の基本方針を語れる人物に会うべく、郊外電車に乗った。麦畑の間をしばらく走って着いた小さな駅で、ブルーノ・ゴルニッシュ(74)が待っていた。国民連合の前身「国民戦線」の元副党首である。
ゴルニッシュは、初代党首ジャン=マリー・ルペンの側近として知られ、1999年には党ナンバー2の幹事長に就任し、2002年の大統領選を取り仕切ってルペンの決選進出を果たした。
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