欧州のガス問題に見る「Me-first」と国際エネルギー秩序の動揺

執筆者:小山 堅 2022年12月1日
タグ: EU
エリア: ヨーロッパ
ゼロサムゲームの下での無秩序なエネルギー争奪戦争奪戦が始まりかねない[建設が進むユニパーのLNGターミナル=2022年9月29日、ドイツ北西部ヴィルヘルムスハーフェン](C)AFP=時事
今冬のガス不足は最悪の危機を回避したと見られるが、欧州の在庫が極めて低い水準からスタートする2023~2024年は一層厳しい状況が予想される。支払能力の高い「プレミアムバイヤー」が自らの安定供給だけを追求すれば、ゼロサムゲームの下での無秩序な争奪戦にもなりかねない。日本は国際エネルギー秩序の維持・強化にリーダーシップを取る必要がある。

 今冬、欧州では深刻なガス不足が発生し、まさに「エネルギー危機」に直面するのではないか、という懸念がこの秋口頃までは現実に存在していた。その象徴的な出来事は、8月末に記録した欧州ガス取引ハブ、TTFでの100万BTU(英国熱量単位)当たり約100ドルという、原油換算で1バレル当たり600ドル近い異常な暴騰であった。ロシアからの主力パイプライン、ノルドストリーム1の供給が大幅に低下し、その先行きに大きな不安が発生する中、欧州で深刻なガス不足が発生する、との懸念がこの暴騰をもたらしたのである。

 しかし、その後、TTFでのガス価格は大きく低下し、最近では100万BTU当たり30ドル台後半の推移となっている。もちろん、この価格水準でも原油換算約200ドルの「高価格」ではあるが、ひところの異常な暴騰からは大きく低下したことも事実である。

今冬もまだ予断は許されない

 なぜ価格が低下したのか、その背景として、欧州各国での死に物狂いの取組みが功を奏した面は見逃せない。ロシア産のガスを代替するため、昨年後半から欧州では米国産を中心にLNG(液化天然ガス)輸入を大幅に拡大してきた。今やEU(欧州連合)と英国を合わせた欧州は、中国と日本を抜いて世界最大のLNG輸入地域となっている。

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執筆者プロフィール
小山 堅 日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員。早稲田大学大学院経済学修士修了後、1986年日本エネルギー経済研究所入所、英ダンディ大学にて博士号取得。研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。政府のエネルギー関連審議会委員などを歴任。2013年から東京大公共政策大学院客員教授。2017年から東京工業大学科学技術創成研究院特任教授。主な著書に『中東とISの地政学 イスラーム、アメリカ、ロシアから読む21世紀』(共著、朝日新聞出版)、『国際エネルギー情勢と日本』(共著、エネルギーフォーラム新書)など。
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