Weekly北朝鮮『労働新聞』 (32)

最高人民会議「核戦力」を憲法条文に明記(2023年9月24日~9月30日)

執筆者:礒﨑敦仁 2023年10月2日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
最高人民会議での演説で、憲法条文への「核戦力」保有明記を誇示した金正恩(右下)[『わが民族同士』HPより)
金正恩は「核武力建設政策」が「国家の基本法で永久化」したことを誇示、今後の「非核化」交渉がいっそう困難になるのは疑いない。その正当性を非常に丁寧に説明したことが特筆されるが、主眼は生活が犠牲になる自国民に向けたメッセージか。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 7月下旬から金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の動静報道が相次いでいたが、ここにきてようやく落ち着きを見せている。

 9月28日付は、26日と27日の両日開催された最高人民会議第14期第9回会議について報じた。金正恩もオブザーバーとして出席して「意義深い演説」を行った。金正恩は、2019年4月の憲法改正によって今期から代議員から外れているが、2019年4月2021年9月2022年9月には出席して「施政演説」を行ってきた。

 演説では、今年最大の成果が「国家防衛力、核戦争抑止力の強化において飛躍の全盛期を確固として開いたこと」にあると位置づけられ、「憲法に新時代のわれわれの国力の実状を反映する事業を成功裏に行った」とされた。核開発を進める現状を憲法条文に刻んで「核保有国」であることを再確認したのである。

 北朝鮮憲法では、2012年4月の改正で既に「核保有国」であることが明記されていたが、あくまでも前年末に死去した金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の業績として序文で触れられたのみである。今回は、「朝鮮民主主義人民共和国は、全人民的、全国家的防衛体制に依拠する」と規定する第58条に、「核兵器の発展を高度化して国の生存権と発展権を保証して戦争を抑止し、地域と世界の平和と安定を守るという内容」を明記したという。……

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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