饗宴外交の舞台裏 (71)

ハツカネズミも駆り出されたタイ流のもてなし

執筆者:西川恵 2003年12月号
タグ: タイ 中国 北朝鮮
エリア: アジア

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が十月二十、二十一日の両日、バンコクで日米中など二十一カ国・地域の首脳が参加して開かれた。 本来は経済協力を話し合うフォーラムだが、焦眉のイラクや北朝鮮問題によって、テロと核、安全保障が中心議題となった会議は世界の注目を集めた。主催国タイのタクシン首相にとっても前例のない桧舞台となった。好調な経済と、巧みな内政・外交運営で政治基盤を強化している首相にとって、タイが東南アジア外交の主軸となり、国際社会で威信を高める格好の機会でもあった。 初日の二十日夜、スリキット会議センターで首脳二十一人と夫人十八人が参加して歓迎晩餐会が開かれた。料理を担当したのはバンコクの最高級ホテル「ザ・オリエンタル」総料理長のウィチット・ムクラさん(四一)率いる二十人の料理人。ウィチットさんは王宮の晩餐会も任されるタイ料理界の第一人者で、事前に首脳から上がってきたリクエストをもとに次のようなメニューを練り上げた。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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